「はたと気付いたよ」
「なんだい」
「松本零士先生は強烈な終末思想がある」
「たとえば?」
「もともとのハーロックはマゾーン侵攻で地球が壊滅する」
「うん」
「ガンフロンティアはイエロークリークの日本人が壊滅する」
「そうだね」
「ワダチは日本そのものが壊滅する」
「そうだ」
「1000年女王もノアの方舟的な宇宙船が出てくる」
「むむ」
「わが青春のアルカディアも敗戦から始まる」
「そうアルか」
「999だって、実は崩壊した地球で鉄郎が戦っている」
「そうか。多くの作品が終末とセットなのか」
「でもさ。たいていの場合、終末を迎えた後の方がみんな生き生きとしている」
「えっ?」
「終末で人類は滅びない。主人公は死なない」
「ガレキの中から力強く再生するわけだね」
「それが、太平洋戦争に対する終戦の影響をもろにかぶった世代なのだろう」
「確かにそういう世代だね」
「そう思うと、さらば宇宙戦艦ヤマトと松本零士の確執の原点が見えてくる」
「それはいったい?」
「『敗北と再生』が松本パターンなのだ。しかし、さらば宇宙戦艦ヤマトは『勝利と死』の映画であった」
「なるほど」
「であるから、ヤマト2はその路線が決定的に修正されねばならない」
「どうなったの?」
「だから、ヤマト2はヤマトの敗北と死んだはずの島の再生でまとめられる。勝ったのはテレサで、ヤマトは勝てなかったのだ」
「そうか」
「だから、松本零士は新たなる旅立ちを許容できない。敗北後にもっと生き生きとした主人公を描きたいが、そうなっていないからだ。そうではなく後輩の世代が出てきてしまう」
「うーむ」
「だから、永遠には新たなる旅立ちの続編ではなくなり、後輩世代よりも古代世代の話になろうとする。そこはあまり上手く行っていないが」
だからどうした §
「それがどうした?」
「だから、ヤマトはどこまで行っても松本パターンから逸脱して松本先生をイライラさせる存在だったのだよ。あれほど手間暇をつぎ込んだのに、松本パターンに持ち込めないんだ」
「えっ?」
「だから、ある意味でヤマトに冷淡なのも分かる」
「確かに、ある意味では冷たいね」
「でも、それは集団作業であるアニメでは当たり前だ。個人の思い通りにならないことだらけだ。そりゃもう、そういう話は直接現場の人から耳にしたこともある。時として監督ですら思い通りにできないほどだ」
「ヤシガニ事件のこと?」
「いや、別件で聴いている」
「ひぇ~」
「そういう状況で直言して思い通りの方向に持っていこうとする西崎さんは帝王であるが、間違っているとも言えない。そうしないと、個人の思いはフィルムに焼き付けられないからだ」
「西崎総統バンザイ」
「宮崎駿ですら、帝王と揶揄されるケースがあるが、それもまた必然だ」
だからどうした2 §
「それがどうした?」
「だから、ヤマトはどこまで行っても松本パターンから逸脱して松本先生をイライラさせる存在だったのだよ。あれほど手間暇をつぎ込んだのに、松本パターンに持ち込めないんだ」
「えっ?」
「だから、ヤマトとは別に松本アニメが存在する理由も分かる。個人の思いをフィルムに焼き付けるにはヤマトではダメだったのだ」
「うーむ」
「しかし、初期の松本アニメは個人の思いをフィルムに焼き付けたとも言えない」
「というと?」
「明らかに昔のアニメのハーロックとか松本零士の趣味じゃ無い要素が入り込んでいる」
「そこは問題があるってことだね」
「でも原作者だから影響力は行使できて、実際に1000年女王のあたりから強く影響を行使していると思う。そのへんは開き直ったのだと思う。支持は失ったけどね」
だからどうしたIII §
「それがどうした?」
「だから、ヤマトはどこまで行っても松本パターンから逸脱して松本先生をイライラさせる存在だったのだよ。あれほど手間暇をつぎ込んだのに、松本パターンに持ち込めないんだ」
「えっ?」
「だから、ヤマトの原作が松本零士ではない、ということが分かる。骨格の部分は別物なんだ」
「確かに西遊記+新撰組だからね」
「その骨格は松本先生参加以前に確定しているわけで、いくら頑張ってスープを豚骨に入れ替えても麺までは変えられなかったわけだ」
オマケ §
「雪、お願いだ。宇宙の海はオレの海なんだ」
「だからどうしたのよ古代君」
「有紀螢のコスプレをしてくれ」
「いやよ、そんなの」
「頼む」
「私はそんな服、着ません」
「そこを頼むよ」
「絶対しません」
「地球のどこに逃げても追いかけてお願いするからさ」
「じゃあ、地球から逃げるわ。移民船団の司令官やってくれってオファーがあるから丁度いいわ」
「どうしてそこまで……」
「だって、主題歌で歌ってるでしょ?」
「えっ?」
「宇宙の海はオレの海(中略)この星捨てて雪は(コスプレ)しない」
「ぎゃふん」
オマケ2 §
「雪、お願いだ。宇宙の海はオレの海なんだ」
「だからどうしたのよ古代君」
「有紀螢のコスプレをしてくれ」
「いやよ、そんなの」
「頼む」
「それは愛しのハーロックさまの前でしかやらないの」
「えっ?」
「ハーロックさまと結婚できないから、ハーロックさまの弟って感じのあなたと結婚したの」
「そんなあ」
「完結編でも70mm版ではめんどくさくなって、エッチシーン短縮したでしょ?」
「まさか、そんな裏が!」